家族の誰かが病気になったら

公的な保障をしっかり理解することから始まる医療保障

もしも家族の誰かが入院したら、一番の心配は病状ですね。
次に心配になることは経済的な問題です。特に一家の大黒柱の夫が入院したら、治療費、入院費、生活費などいくらかかるか不安になってしまいます。その不安を少しでも解消する為に、医療保険に加入しなくてはと思ってしまいがちですが、本当に多額な保険が必要でしょうか。
日本には、社会保険の制度で健康保険という公的な医療保障があります。
健康保険制度から具体的に医療費を考えてみましょう。

公的な保障は?

職業によって、「国民健康保険」「政府管掌健康保険」「組合管掌健康保険(健保組合)」「共済組合・短期」などのどれかに加入しています。一般外来でかかる医療費の自己負担は3割(就学児から69歳)です。70歳以上は所得に応じて1割または3割の自己負担です。75歳以上を対象に「後期高齢者医療制度」があります。また、高額な医療費がかかった場合は、「高額療養費制度」(自己負担限度額までの負担で済む)もあります。組合管掌健康保険だと、独自の付加給付がある場合も多くあります。まず加入している公的医療保険でカバーされる部分を知ることが大事です。

「健康保険」の対象にならない費用として差額ベッド・高度先進医療費・食事代の一部・入院中の諸雑費などがあります。これらは全額自己負担です。

▼入院した場合の医療費を、例を挙げて説明してみましょう。

実際に入院したら

サラリーマンMさん(58歳)

43日間入院(4月2日入院。5月14日退院)
入院先は公立病院・4人部屋・差額ベッド代なし
政府管掌健康保険・標準報酬日額15,000円
CO・OP共済《たすけあい》 医療2000円コースに加入

入院費はいくら?(医療費は月ごとに計算されます)

(1) 4月分(4月2日~ 4月30日) の入院費

自己負担の医療費  197,317円(総医療費657,725円の3割)
食事代  16,380円(保険適用外)

(2) 5月分(5月1日~ 5月14日) の入院費

自己負担の医療費  57,150円(総医療費190,500円の3割)
食事代  7,800円(保険適用外)

(3) 高額療養費(4月支払い分のみ対象 Mさんの場合は一般の所得区分で計算)

自己負担限度額  80,100 +(657,725 – 267,000)× 1% = 84,007円
還付額  197,317 – 84,007 = 113,310円

自己負担した金額は

給付金はいくら?

傷病手当金

標準報酬日額  15,000円 × 0.6 = 9,000円 × 40日分 = 360,000円
(健康保険の制度で、給与の支給がなかった時に、標準報酬日額の6割が4日目から支給される。
国民健康保険にはない。)

加入しているCO・OP共済《たすけあい》共済金

215,000円(入院1日目から43日分)
(保険会社扱いの医療保険では、検査入院の場合は給付がない保険もある。

実際にかかった費用は?
入院費の他に雑費として入院中のテレビカード、雑誌、飲食費(許可された場合)、家族の交通費などが必要になります。Mさんは、約20,000円でした。 差額ベッド代がないと、43日間入院しても雑費を合わせて185,337円、CO・OP共済の共済金もあり、負担は思っていたよりずっと少なくて済みました。 差額ベッド代がかかる場合は、一日5,000円とすると、215,000円必要になります。差額ベッド代の負担は大きいですね。差額ベッド代があると入院費と合わせて、400,337円になります。

どのくらいの保険に入っておけば安心?

Mさんの場合、今回の費用を民間の医療保険や共済でカバーしようと考えると、1日あたりの必要額は185,337円÷43日=4,310円。差額ベッドの負担がある場合なら、400,337円÷43日=9,310円。約10,000円の給付金がある保険などに加入すればよいという計算になります。

では自己負担分をカバーするためには民間の医療保険に加入することが第一でしょうか。必ずしもそうではありません。不安を解消する為に様々な保険に加入したとしても、入院期間や病気によっては給付金が出ないこともあります。保険に加入していても、給付されなければ貯蓄でカバーすることになります。高額な医療保険が本当に必要かどうか、考える目安になると思いませんか。

サラリーマンの場合は、傷病手当金があるので生活費の心配も緩和されますが、国民健康保険の加入者には傷病手当金がありません。自営などで働けないと収入が減る場合は、「所得補償保険」や、入院給付金を多めに確保するなどで対応します。

Mさんの例からもわかるように、公的な医療保険の制度の違いを理解し、不足分を民間の医療保険や共済に加入して補うということを考えましょう。また、もし病気になったらどういう治療を受けたいのか一度考えてみましょう。個室に入りたい、高度先進医療を受けたいなど希望すれば費用も高額になります。自分のライフプランにあった医療保障を考えることが大事です。備えあれば憂いなし。そのためにもライフプラン講座を活用して下さい。

税金の医療費控除は

一家で年間10万円※1を超える医療費がかかった場合は、確定申告をして所得税の還付を受けることができます。通院費、入院費、買い薬、交通費などを合計して、10万円を超えた分が所得から控除され、所得税が還付になります。所得額が変更になるので住民税も減額されます。Mさんの場合は、家族全員の医療費を合わせて10万円を超えたので確定申告をして税金が戻ってきました。

※1 10万円または所得金額の5%(どちらか少ない額)。高額療養費の還付金、保険や共済などの給付金は、かかった医療費から差し引く。

参考資料

▲生活クラブFPの会 北川 陽子

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