家庭内における子どもの事故は毎年発生しており、「食べ物ではないものを飲み込んでしまった」という誤飲事故も数多く報告されています。「手にしたものを何でも口に運んでしまう」といった月齢・年齢のお子さんがいる家庭では、「子どもが誤飲したらどうしよう」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。当記事では、小さな子ども(赤ちゃん)のいる家庭に向けて、子どもの誤飲事故に関する報告事例や誤飲した場合の対処法について解説します。子どもの誤飲を予防するための対策や、誤飲に関する緊急相談先も併せて確認し、子どもの誤飲に関する理解を深めましょう。
目次
1. 赤ちゃん・子どもの誤飲事故に関する報告事例
小さな子どもや赤ちゃんは、手にしたものを何でも口に運んでしまう上に、喉がせまく飲み込む力や吐き出す力が弱いため、誤飲事故を起こしやすいと言われています。実際に、2018年度における厚生労働省の調査では、全国のモニター病院(8施設)で年間626例の誤飲事故に関する報告がありました。そのうち273例が有症状であったと認められています。
【赤ちゃん・子どもの誤飲事故に関する報告(2018年度)】
(出典:厚生労働省「2018年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」/https://www.mhlw.go.jp/content/11124000/000581263.pdf)
小さな子どもがいる家庭では喫煙は控えたほうがよいものの、たばこを家庭に置いている方も少なくないでしょう。また、医薬品や食品類、おもちゃは子育て家庭では当然のように置いてあるものです。赤ちゃんや子どもの誤飲は、家庭内において非常に身近なリスクであると言えるでしょう。
1-1. 赤ちゃん・子どもの誤飲はなぜ危ない?
「誤飲は危険」という認識はあるものの、危険であることの具体的な理由は知らないという方も多いのではないでしょうか。誤飲が危ないと言われる主な3つの理由について確認しましょう。
【赤ちゃん・子どもの誤飲が危険な理由】
無症状で便とともに体外に排出されるケースもありますが、入院や手術を必要とするケースも珍しくありません。異物の内容や量によっては死に至る可能性もあることに注意しましょう。
2. 赤ちゃんや子どもが誤飲したときの対処法
赤ちゃんや子どもが誤飲しないよう気を付けていても、子どもは大人が思ってもいなかった行動をとることがあります。赤ちゃんや子どもが誤飲してしまったときには、どのように対処すればよいのでしょうか。
ここでは、赤ちゃんや小さな子どもが異物を誤飲したときの対処法について解説します。
2-1. 少量であればしばらく様子を見る
紙や石鹸、クレヨンなどのような異物を少量飲み込んでしまった場合は、口の中に残っているものを可能な限り取り除いた上で、しばらく様子を見てみましょう。特に症状が見られない場合は、しばらく経過を観察するという対応で問題ありません。
ただし、経過観察中に以下のような症状が出て容態が大きく変わった場合は、小児科のある医療機関を早急に受診してください。
【医療機関を受診すべき症状(例)】
2-2. 誤飲したものを吐かせる
飴やナッツ類などの窒息の恐れがある食べ物や、タバコ・医薬品・防虫剤の薬品を誤飲した場合は、早急に異物を吐かせた上で医療機関を受診しましょう。
特に「子ども自身が喉を押さえたり口に指を入れたりしている」「顔色が青い」といった症状が見られる場合は窒息の可能性が高いため、早急な応急処置が必要です。
【誤飲したものを吐かせる方法】
なお、アルコール類や成人向けの医薬品、洗剤などを誤飲した場合は、消化器官の粘膜を保護するために水や牛乳を飲ませてから吐かせましょう。防虫剤は油に溶ける成分が含まれているため、牛乳ではなく水を飲ませた上で吐かせてください。
2-3. すぐに救急車を呼んで医療機関を受診する
何を飲み込んだか分からない場合や、石油製品・漂白剤・トイレ用洗剤などの強い化学薬品、尖ったものを飲み込んだ場合は、吐かせずにすぐに救急車を呼びましょう。また、異物を誤飲してから意識がない場合も早急に救急に連絡してください。吐かせてもよい異物の場合でも、無理に吐かせないよう注意が必要です。
救急車を呼んで医療機関を受診する際には、以下のようなポイントを救急隊員や医師に伝えましょう。誤飲したものと同じものや、製品のパッケージも持参すると適切な処置を進めやすくなります。
【誤飲で受診した際に医療従事者へ伝えるポイント】
3. 赤ちゃんや子どもの誤飲を防ぐためには?
赤ちゃんや子どもの誤飲を防ぐためには、まず子どもの口に入る大きさのものを子どもの周りに置かないことが大切です。子どもの口の大きさは3歳児で直径4cmほどであるため、これよりも小さなものは子どもの口に入ると窒息する危険性があります。直径4cm未満のものは子どもの手の届かない場所に片付けておきましょう。
「子どもの手の届かない場所」は子どもの月齢・年齢によって異なります。寝返りやはいはいの頃の赤ちゃんの場合は、床やローテーブルの上に誤飲しやすいものを放置しておかないようにしましょう。ナッツ類の食べこぼしや硬貨の片付け忘れ、タバコの吸い殻などに注意してください。
つかまり立ちができる月齢以降は、手の届く範囲がどんどん広がります。子どもの目線ほどの高さの場所や、台を使えば届くような場所には、子どもの興味を引くような危険なものを置かないようにしましょう。机などの引き出しやシンク下収納の扉なども開けられるようになるため、危険なものを片付けた上でストッパーやカギを利用することをおすすめします。
4. 誤飲に関する緊急相談先
子どもが誤飲した場合の対応や応急処置、適切な対策が分かっていても、実際に子どもが誤飲した場合に的確に行動に移せるとは限りません。適切な対応が分からない場合は、まずは子どものかかりつけ医に連絡し、指示を仰ぎましょう。
かかりつけ医の診療時間外や救急車を呼ぶべきか迷った場合には、「小児救急電話相談」を利用してください。「#8000」をダイヤルすると、小児科の医師や看護師から適切な対処法や受診すべき医療機関に関するアドバイスをもらえます。受付時間帯は自治体によって異なるため、住んでいる都道府県の窓口を事前に確認しておきましょう。
また、タバコを誤飲してしまった場合は、日本中毒情報センター「中毒110番」の「タバコ誤飲事故専用電話(072-726-9922)」の情報を聞くこともおすすめです。タバコの誤飲事故に関する情報を365日24時間提供しているので、正しい情報を確認してください。
まとめ
赤ちゃんや小さな子どもは好奇心が強く、手につかんだものを何でも口に運んでしまいがちです。喉がせまい上に飲み込む力や吐き出す力も弱く、窒息や中毒症状などのリスクが高いため、誤飲した際には吐き出させるなどの処置をした上で医療機関を受診しましょう。緊急性が高い場合は迷わず救急車を呼んでください。
子どもの誤飲を防ぐためには、子どもの成長に合わせた対策を講じることが大切です。「子どもの口に入るサイズのものを周囲に置かない」「子どもの行動範囲に危険なものを置かない」といった点に注意しましょう。万が一誤飲した場合は、かかりつけ医や小児救急医療電話相談などの専門機関に相談することをおすすめします。