がん治療は、日々進化を遂げています。近年では、第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」も注目されています。がんの治療方法は変わってきている部分もあるため、万が一に備えて情報をアップデートしておくことが大切です。
今回は、がんの罹患例数や生存率などがんに関する基本統計データ、代表的ながんの三大治療法について解説します。
三大治療法に続く第4の治療である「免疫療法」、第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」にも触れるため、ぜひ参考にしてください。
目次
3. 今後のがん治療は第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」も拡大か
1. がんに関する基本統計データ
日本人の2人に1人は、生涯何らかのがんに罹患すると言われています。がんは身近な病気で、すべての人にとって少なからずリスクがある病気です。
がんには良性腫瘍と悪性腫瘍があり、がんに罹患した人の約4~6人に1人は悪性腫瘍で亡くなっています。
(出典:がん情報サービス「がんという病気について」/https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html)
ここでは、がんの罹患例数・死亡者数・累積死亡リスク・生存率について詳しく解説します。
1-1. 罹患例数
2019年の統計データによると、国内におけるがんの罹患例数は999,075例です。
男女別のがんの罹患例数は、下記の通りです。
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)「全国がん登録」/https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)
日本人の人口男女比は女性の方が多いのに対して、男女別のがんの罹患例数は男性の方が多いことが分かります。
なかでも、男性は「前立腺がん」の罹患率が高いことが特徴です。早期段階では、自覚症状はありません。
女性の場合は、「乳がん」の罹患率が高くなっています。初期症状としては、乳房のしこりや左右の形の非対称などが挙げられます。
男女総数で見ると、罹患率が最も高いのが大腸がんです。
1-2. 死亡者数
全国がん死亡データによると、2021年のがんによる死亡者数は男女合わせて381,505人となっています。
男女別のがんによる死亡者数は、下記の通りです。
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)「人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部)」/https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)
男性のがんの罹患例数が多いこともあり、がんによる死亡者数は女性より男性の方が多い傾向にあります。
男性は「肺がん」「大腸がん」「胃がん」の順で死亡率が高く、女性は「大腸がん」「肺がん」「膵臓がん」の順で死亡率が高いことが特徴です。男女総数で見た場合、死亡率が最も高いのは「肺がん」です。
1-3. 累積死亡リスク
がんによる累積死亡リスクは、男女によって差があります。累積死亡リスクとは、がん以外の疾患で死亡しないと仮定した場合に、ある年齢区間におけるがんで死亡する確率を意味します。
2021年の統計データに基づくすべてのがんの累積死亡リスクは、下記の通りです。
(出典:がん情報サービス「最新がん統計」/https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)
がんによる死亡者数が女性に比べて男性の方が多かったように、男性の累計死亡リスクも男性の方が高いと言えます。
数字にすると累積死亡率は低く感じますが、身近な表現で言うと男性は約4人に1人、女性は6人に1人ががんで亡くなる可能性があります。決して他人事とは言えない確率です。
1-4. 生存率
2009年から2011年におけるがんの5年相対生存率は、下記の通りです。
(出典:全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター,2020)独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書/https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html)
5年相対生存率とは、がんと診断された人を治療によってどれくらい救えるかを示す指標であり、がんの部位によって数値には差があります。
前立腺がんの5年相対生存率は99.1%、乳がんは92.3%であるのに対し、膵臓の場合は男女ともに8%台です。
ただし、上記のデータは10年以上前のデータであり、医療が発展した現在とでは状況が異なっている可能性が高いと言えます。
2. 進歩を続けるがん治療|代表的な三大治療法について
がんの治療方法は、医療の発展とともに年々進化を遂げています。
これまでがん治療として行われてきた治療方法は、「外科的療法」「化学療法」「放射線療法」の3つです。治療法のいずれかを選択することもあれば、組み合わせて治療を行うこともあります。
それぞれの治療方法と特徴は、下記の通りです。
2018年には、日本の教授が開発した免疫チェックポイント阻害剤がノーベル医学生理学賞を受賞しました。免疫チェックポイント阻害剤の開発により、近年では三大治療法に続く第4の治療として「免疫療法」も注目されています。
2-1. 第4の治療法「免疫療法」とは
免疫療法とは、人の身体に元々存在している免疫系の働きを生かす治療方法です。がん細胞の増殖や悪性化は、がん細胞を処理する免疫系を抑制してしまいます。免疫チェックポイント阻害剤を投与することで、免疫細胞を活性化させてがんを治療する効果が期待できます。
免疫療法のメリットは、下記の通りです。
ただし、日本で保険診療として認められている免疫療法はごくわずかです。三大治療法に比べると、発展途上の治療法と言えます。
3. 今後のがん治療は第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」も拡大か
免疫療法は、人々の記憶に新しい治療方法です。2020年9月には、世界で初めて第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」が日本で承認されました。今後は、がんの治療方法として光免疫療法が拡大されると考えられています。
光免疫療法は、光に反応する薬剤を体内に投与した後、近赤外線を照射することでがん細胞を殺傷する治療法です。薬剤が光に反応したがん細胞だけをピンポイントで殺傷できるため、免疫療法と同様に正常な細胞を傷つける心配はありません。
2021年1月には、光免疫治療が早くも保険適用となりました。ただし、現時点で保険適用されるのは、顔から首の範囲に発生する「頭頸部がん」のみです。今後の研究により、保険適用の範囲が拡大されることが望まれています。
光免疫療法のメリットとデメリットは、下記の通りです。
光免疫療法による副作用が起こらないように、退院後4週間は直射日光や強い光を避けて生活する必要があります。がんがあった部分の痛みは短期的なものであり、手術に比べて身体の機能や生活の質を保持しやすいことが特徴です。
がんは身近で怖い病気であることに変わりはありませんが、医療の発展とともに「がん=治る病気」となることが期待されます。
まとめ
がんは、生涯何らかのがんに罹患する人が2人に1人と言われているほど身近な病気です。一方、がん治療は年々進化を遂げており、治療方法の選択肢は広まりつつあります。
代表的ながん治療法は、「外科的療法」「化学療法」「放射線療法」の3つです。さらに、近年は第4の治療法と呼ばれる「免疫療法」や、第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」が注目されています。
光免疫療法のメリットは、がん細胞だけをピンポイントで殺傷できるため、正常な細胞を傷つけずに治療できることです。今後も医療の発展により、光免疫療法が拡大されることが期待されています。