2024/3/28(最終更新日)

子どもが感染しやすいRSウイルスとは?症状と治療・予防法も

子どものいる家庭で注意したい病気に「RSウイルス感染症(RSV)」があります。RSウイルス感染症は子どもがかかりやすい病気として知られており、名前を聞いたことがある方も多いでしょう。

RSウイルス感染症にかかった子どもはつらい症状に悩まされるため、保護者の方は治療や予防の知識を持っておくことが大切です。

今回はRSウイルス感染症とはどのような病気なのかを解説し、流行時期や症状・感染経路、治療方法と予防方法も紹介します。

目次

1. RSウイルス感染症とは?

1-1. RSウイルス感染症の流行時期

2. RSウイルス感染症の症状

3. RSウイルス感染症の感染経路

4. RSウイルス感染症の治療方法

5. RSウイルス感染症の感染に特に気をつけておくべき方とは

6. RSウイルス感染症の予防方法

6-1. 日常生活における予防方法

6-2. 予防接種・ワクチンによる予防方法

まとめ

1.RSウイルス感染症とは?


RSウイルス感染症とは、RSウイルスへの感染によって発症する呼吸器の感染症です。発症すると鼻汁・咳・発熱などの症状が現れます。

RSウイルス感染症の発症の中心は0歳~1歳児です。感染しやすい病気であり、生後2歳までにはほぼ100%の確率で感染すると言われています。特に乳幼児の感染は症状が強く出るおそれがあり、注意が必要です。

また、RSウイルス感染症は子どもだけでなく、大人も感染・発症する可能性があります。

1-1.RSウイルス感染症の流行時期

RSウイルス感染症の流行時期は都道府県によって偏りがあるものの、通常は秋から冬にかけて流行するとされています。

しかし、近年は流行時期が変化しつつあり、必ずしも秋から冬にかけて流行する感染症というわけではありません。

2018年~2024年第6週のデータをもとに、RSウイルス感染症の流行時期の変化を説明します。


(引用:国立感染症研究所「IDWR感染症週報」/https://www.niid.go.jp/niid/images/idwr/pdf/latest.pdf

※上記は2024年第6週(2月5日〜2月11日)時点のデータです

2018年と2019年は通常通り秋から冬にかけて流行していて、どちらの年も流行のピークは9月上旬です。

一方、2021年と2023年は5月中旬頃から感染者数が増え始めていて、夏季が流行時期の中心となっています。流行のピークは2021年が7月中旬、2023年は7月上旬です。

また、2022年も夏季に流行し始めているものの、全体的に感染者数は少ない傾向となっています。

近年は夏季にRSウイルス感染症の流行がスタートする傾向にあり、2024年も夏季の流行に注意が必要です。

2.RSウイルス感染症の症状


RSウイルスに感染すると、2~8日(典型的には4~6日)程度の潜伏期間を経たあとに「風邪症状」が現れます。

RSウイルス感染症の主な症状は、下記の3つです。

  • 鼻汁が出る
  • 咳が出る
  • 発熱する


RSウイルス感染症は基本的には症状が軽く、初感染の乳幼児の7割は数日のうちに軽快が見込めます。

しかし、残りの約3割は症状が悪化し、重症化するおそれがあります。

RSウイルス感染症が重症化した場合、主な症状は下記の通りです。

  • 呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が聞こえる(喘鳴)
  • 息を吸うときに胸の一部が凹む状態になる(陥没呼吸)
  • 咳がひどくなる
  • 呼吸困難の様子が見られる
  • 高熱が出る


RSウイルス感染症が重症化すると、下気道が炎症を起こす「細気管支炎」や「肺炎」に進展することもあります。子どもがRSウイルス感染症にかかった場合は、症状が重症化していないか経過をよく確認しましょう。

RSウイルスは終生免疫の獲得がなく、治った後も再感染するケースがあります。再感染した場合の症状は鼻汁や軽い咳が出る程度で、重症化することは多くありません。

また、大人のRSウイルス感染症の症状は、健康な成人であれば軽症で済むことがほとんどです。

ただし、免疫が低下している高齢者の方や、基礎疾患・免疫不全を持っている方は重症化するおそれがあります。

3.RSウイルス感染症の感染経路

RSウイルス感染症の感染経路としては、主に「飛沫感染」と「接触感染」の2つが挙げられます。はしかや水ぼうそうのように空気感染することはありません。

RSウイルス感染症の飛沫感染は、RSウイルスを含む飛沫を浴びたり、吸い込んだりすることで感染します。下記のケースが主な感染の流れです。

  • 飛沫感染の主な例
  • RSウイルスに感染している人の咳やくしゃみを浴びた
  • RSウイルスに感染している人と長時間話した


一方で接触感染は、RSウイルスに感染している人との接触や、RSウイルスが付着した物への接触を介して感染します。

  • 接触感染の主な例
  • RSウイルスが付着したドアノブに触り、そのままの手で目や口を触った
  • RSウイルスが付着した食べ物を食べた


RSウイルスは、ドアノブやテーブルなどに付着した状態でも数時間は生存できると言われています。RSウイルスに感染している人と直接の接触がない場合でも、接触感染の可能性は意識したほうがよいでしょう。

4.RSウイルス感染症の治療方法


RSウイルス感染症に対する特効薬はありません。発症した場合、症状を和らげる対症療法が主な治療となります。

RSウイルス感染症の対症療法は、下記のような内容です。なお、薬は医師から処方されたものを使用してください。

  • 咳がひどい場合は咳止め薬の服用
  • 高熱の場合は解熱剤の服用
  • 鼻汁や痰の絡んだ咳が出る場合は去痰剤の服用
  • 呼吸がつらい場合は気管支拡張剤の服用
  • 呼吸困難の場合は酸素吸引の実施など


また、RSウイルスには抗生物質が効かないため単独の発症では処方がされないものの、細菌感染などの合併症が疑われる場合には抗生物質の服用も行います。

RSウイルス感染症の治療のために病院やクリニックを受診しても、基本的に入院はしません。自宅で栄養補給・水分補給をして安静にしながら、病気が軽快するのを待ちます。

しかし、生後1~2か月の乳児で、かつ重症化リスクがある場合は入院・経過観察が必要となるケースもあります。

5.RSウイルス感染症の感染に特に気をつけておくべき方とは

下記の特徴がある方は、RSウイルス感染症の感染には特に気をつけておきましょう。

  • 生後6か月以内の乳児
  • 重症化リスクの高い基礎疾患を有する子ども(早産児や、心臓や肺における基礎疾患・免疫不全の基礎疾患がある乳幼児など)
  • 慢性呼吸器疾患といった基礎疾患を有する高齢者


また、感染に気をつけるべき方と同居する方も、当然ながらRSウイルス感染症の感染には注意が必要です。同居者が感染すると、飛沫感染・接触感染によって感染に気をつけるべき方の感染リスクも高くなります。

6.RSウイルス感染症の予防方法


RSウイルス感染症の予防方法としては、「日常生活における予防方法」「予防接種・ワクチンによる予防方法」の2つが存在します。

乳幼児などの子どもや感染に気をつけるべき方がいる家庭では、予防方法を理解して適切に予防を進めることが大切です。

最後に、RSウイルス感染症の2つの予防方法を解説します。

6-1.日常生活における予防方法

日常生活における予防方法では、RSウイルス感染症の主な感染経路である飛沫感染・接触感染を防ぐための対策を行います。

主な予防方法は下記の通りです。

  • こまめな手洗い・うがい
  • マスクの着用
  • 流行期に乳児を連れて外出するときは人混みを避ける
  • 赤ちゃんが口に入れるものの消毒(RSウイルスは消毒薬に弱い傾向にある)など


「こまめな手洗い・うがい」「マスクの着用」といった対策は、周囲の方も実践しましょう。

6-2.予防接種・ワクチンによる予防方法

予防接種・ワクチンによる予防方法を行うと、RSウイルス感染症の発症や重症化を抑えられる可能性があります。

日本で受けられるRSウイルス感染症の予防接種・ワクチンは、2024年現在では下記の2つです。

  • RSウイルス感染症予防注射「シナジス」

シナジスは、RSウイルス感染による呼吸器感染症の重症化を抑える予防注射です。RSウイルス感染症の流行時期に合わせて、月1回のペースで筋肉内注射により投与します。

シナジスの主な対象者は下記の方です。

  • 早産児の乳幼児
  • 慢性肺疾患や免疫不全などの基礎疾患を有する子ども


具体的な対象者は、受診する医療機関に問い合わせましょう。

  • RSウイルスワクチン「アレックスビー」

アレックスビーは、RSウイルス感染症の発症や重症化を防ぐワクチンです。2023年9月に日本で初めて製造販売承認を取得し、2024年1月に発売されました。

アレックスビーの対象者は、60歳以上の高齢者の方です。接種回数は1回のみで、筋肉内注射による投与を行います。

まとめ

RSウイルス感染症は、0歳~1歳児を中心に発症する呼吸器のウイルス感染症です。発症すると鼻汁・咳・発熱などの症状が現れ、重症化すると喘鳴・呼吸困難や、細気管支炎・肺炎といった病気に進展することもあります。

RSウイルス感染症は感染力が高く、飛沫感染や接触感染によって容易に感染します。手洗い・うがいやマスク着用といった日頃からの予防はもちろん、万が一重症化した場合の備えとして共済・保険にも加入しておくことが大切です。

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