子どもが感染することが多いウイルス感染症に「はしか」があります。はしかの国内患者数は過去10年間で比較すると減少傾向にあるものの、子どもにとってはしかは重症化リスクが高いことから、不安を抱える親御さんも少なくありません。
万が一に備えるためには、はしかとはどのような病気なのか、治療方法はあるのかなど、基礎知識を得ておくことが大切です。そこで今回は、はしかの主な症状と治療方法について解説します。はしかの予防方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
1.はしか(麻しん)とは
はしか(麻しん)とは、麻しんウイルスに感染して起こる感染症の一種です。
麻しんウイルスの飛沫感染と空気感染によって起こります。空気中に漂ったウイルスを吸い込んだり、咳・くしゃみによる飛沫がかかったりすることで感染するため、感染が拡大しやすい病気と言えます。
発症初期は風邪と似た症状が現れるため、はしかと診断するのが困難です。風邪だと思って感染防止対策をせずに普段通り生活する人も多く、知らないうちにウイルスを飛散させてしまうケースも少なくありません。感染力が強く、集団発生へとつながるリスクもあります。
発症からしばらくすると、顔や体に発疹が現れます。特に感染しやすい年齢は、1歳前後です。昔は子ども特有の病気というイメージが強かった感染症ですが、近年では大人の感染も多く報告されています。
2.子どものはしかの主な症状
子どものはしかの主な症状は、下記の通りです。
潜伏期 |
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カタル期 |
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発疹期 |
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回復期 |
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(出典:国立感染症研究所「麻しんQ&A〔麻疹(ましん、はしか)について〕」/
発症から回復までの期間は10日~2週間程度です。回復期になっても機嫌が悪かったり咳が続いたりすることも多く、感染前の状態に戻るには時間がかかります。
はしかは感染力の高さから、学校保健安全法及び保育所における感染症対策ガイドラインによって「解熱後3日以上経過するまで出席停止」と定められています。熱が下がってからもなるべく室内で安静にして過ごしましょう。
(出典:国立感染症研究所「麻しんQ&A〔麻疹(ましん、はしか)について〕」/
2-1.重症化した場合の合併症
はしかは重症化しやすく、特に赤ちゃんは大人に比べてリスクが大きくなります。
はしかが重症化した場合に起こる主な合併症は、以下の通りです。
●脳炎 はしかに感染すると、1,000人に0.5~1人の割合で脳炎が起こります。発生頻度は低いものの、命を落とすリスクが伴うため注意が必要です。発疹が現れてから2~6日程度で発症します。脳炎の症状には、発熱や頭痛の他、嘔吐・けいれん・昏睡などが挙げられます。 ●肺炎 肺炎は、脳炎より発症頻度が高い合併症の1つです。ウイルスの増殖により起こるウイルス性肺炎や、細菌の二次感染による細菌性肺炎があります。回復後に重症な肺炎が見つかるケースも少なくありません。肺炎により呼吸困難に陥ると、命を落とすリスクが高くなります。 ●中耳炎 中耳炎は、はしかの合併症の中で最も発症頻度が高い合併症です。細菌の二次感染によって起こります。中耳炎の症状は、耳痛・不機嫌・耳を触る・耳だれなどです。赤ちゃんは症状を伝えられないため、耳だれがきっかけで発見されるケースが多く見られます。 |
他にも、心筋炎・副鼻腔炎・喉頭炎・喉頭気管支炎など、はしかの合併症はさまざまあります。
3.はしかの診断方法
はしかの診断は、症状や兆候、周囲の流行状況をもとに行うのが基本です。
はしかに見られる典型的なコプリック斑や発疹などの症状が確認でき、保育園や外出先ではしかが流行している場合は、はしかの可能性が高いと診断されます。感染経路に心当たりがある場合は、受診時に医師に必ず伝えましょう。
また、はしかにはインフルエンザの診断に用いられるような診断キットはありません。確定診断のためには、PCR検査やウイルス分離検査などを行う必要があります。血液や咽頭ぬぐい液などから抗体値を調べるため、結果が分かるまでには時間がかかります。
4.はしかの治療方法
はしかにかかった場合、麻しんウイルスを抑える有効な治療法はありません。特効薬がないため、経過を観察しながらの対処療法が中心となります。
重症と診断された場合は、二次感染の治療のために抗生物質や点滴の投与が行われます。合併症が起こっていれば、状態に応じた治療が必要です。
軽症と診断された場合は、自宅でのケアで回復を目指すことになります。
はしかにかかった子どもの自宅ケアのポイントは、下記の通りです。
●状態を観察する 発熱時は、1日3回熱を測り記録しておきます。顔色・尿量・食欲・発疹の状態などを観察することも大切です。機嫌の変化にも注意しましょう。 ●こまめに水分を与える 体調が悪いと水分の摂取量が少なくなります。特に発熱時は脱水症状が起こりやすいため、こまめに水分を与えましょう。湯冷ましや薄めた果汁、乳幼児用の経口補水液などを少量ずつ与えることがポイントです。 ●快適な室温・湿度を保つ 室内は、季節に合わせて大人が快適に感じる温度と湿度に保ちましょう。加湿器を使う場合は、雑菌が部屋に広まらないようにしっかり手入れをしておくことが大切です。 ●安静を保つ はしかにかかっている状態は、体の免疫力が低下しています。細菌感染などのリスクを避けるためにも、室内で安静に過ごすようにしましょう。 ●清潔にする 汗をかいたら着替えさせたりタオルで体を拭いたり、清潔かつ快適な状態を保ちます。お風呂に入ると体力が消耗するため、症状が落ち着くまでは控えましょう。 |
「呼吸が苦しそう」「呼びかけに対する反応が弱い」「耳を痛がる」などの症状がある場合は、病院を受診する必要があります。
5.はしかの予防方法
はしかは感染力が非常に強く、空気感染もするためマスクの着用や手洗い・うがいだけで防ぐことはできません。特に小さい子どもはマスクを嫌がったり気になった場所を触ったりすることが多く、感染リスクが高まります。
はしかの予防として最も有効なのが、麻しん風しん混合(MR)ワクチンの予防接種です。麻しん風しん混合(MR)ワクチンは、はしかと風しんに対する免疫を作り出す効果があります。2回接種による免疫獲得率は、97~99%以上です。
(出典:国立感染症研究所「麻疹とは」/https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html)
麻しん風しん混合(MR)ワクチンには定期接種と任意接種があり、接種できる年齢や費用はそれぞれ異なります。
定期接種の対象年齢と主なスケジュールは、下記の通りです。
対象年齢(定期接種) | |
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第1期 | 生後12か月~24か月 |
第2期 | 5歳~7歳未満(小学校就学前1年間) |
母体由来の麻疹特異的IgG抗体がある生後12か月までの子どもにワクチン接種をしても、体内でウイルスが十分に増殖できないと言われています。そのため、母体由来の抗体が失われるタイミングを想定して生後12か月以降に予防接種を行います。
はしかは子どもの重症化リスクが高いため、生後12か月を過ぎたらできるだけ早く予防接種を済ませておくことが大切です。定期接種の場合、費用は無料です。
定期接種の対象年齢以外の人が予防接種を希望する場合は、任意接種となります。任意接種は自費となり、費用は施設によって異なります。
まとめ
飛沫感染と空気感染でウイルスが広まるはしかは、子どもに多い感染症の1つです。感染から発症までには10~12日間の潜伏期間があり、発症すると38℃以上の高熱やコプリック斑、全身の発疹などの症状が現れます。
脳炎・肺炎・中耳炎などの合併症を引き起こすリスクもあるため、麻しん風しん混合(MR)ワクチンの予防接種を受けておくことがおすすめです。
子どもがはしかに感染した場合や重症化した場合に備えて、共済・保険への加入や内容の見直しも検討してみましょう。