2023/7/20(最終更新日)

【2024年】介護保険制度改定で何が変わる?5つの注目ポイントを解説

2024年には、介護保険制度改定が予定されています。介護保険制度は、介護が必要な方の自立支援やご家族の負担軽減につながる大切な制度です。そのため、改定にあたり何が変わるのか気になっている方もいるでしょう。

今回は、介護保険制度改定に向けてどのような議論が進められているのか詳しく解説します。注目すべきポイント8つについて解説するため、介護保険制度を利用している方やご家族はもちろん、将来に向けて知識を深めておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 2024年介護保険制度改定の背景

2. 2024年介護保険制度改定における注目ポイント8つ

2-1. 訪問介護・通所介護の複合型サービスの創設

2-2. 2割自己負担の対象拡大

2-3. 財務諸表の公表義務化

2-4. 介護予防支援事業所の拡大

2-5. 処遇改善加算の一本化

2-6. 科学的介護のさらなる推進

2-7. 福祉用具貸与のみにおけるケアプラン費のカット

2-8. 介護業界における小規模法人の大規模化

3. 2024年介護保険制度改定で見送りが決定した2つの事項

3-1. 要介護1~2における総合事業への移行

3-2. ケアプランの有料化

まとめ

1. 2024年介護保険制度改定の背景


介護保険制度は、要介護認定や要支援認定を受けた方が介護サービスを受けられる制度です。介護保険制度の運営や介護サービスの提供には、国民が納めた介護保険料や税金が使われています。40歳以上の国民は、介護保険への加入が義務付けられています。

介護保険制度は2000年に施行されて以来、定期的に見直しが行われてきました。社会情勢や環境の変化に合わせた制度の見直しにより、利用者やご家族は適切なサービスを受けることができます。

2025年には人口数が多い団塊世代が後期高齢者となります。「2025年問題」に向けた2024年度の制度改定は、特に重要な法改正になると言えるでしょう。

2. 2024年介護保険制度改定における注目ポイント8つ


2024年度の介護保険制度改定に向けて、さまざまな内容が議論されています。議論の中で特に要点となるポイントは、主に8つです。2024年度の介護保険制度改定の内容を理解するために、どのような変更が予定されているのかチェックしておきましょう。

以下では、介護保険制度改定における注目ポイントの概要と各所からの意見、決定の確実性について解説します。

2-1. 訪問介護・通所介護の複合型サービスの創設


介護保険制度改定の要点の1つに、訪問介護と通所介護の複合型サービスの創設があります。

訪問介護と通所介護を複合化することで、利用者やご家族のニーズに合ったサービスを提供できることがメリットです。また、問題視されている訪問介護の人材不足解消も期待できます。介護業界の人手不足が深刻化していることもあり、訪問介護・通所介護の複合型サービスの創設はほぼ確定と言えるでしょう。

ただし、すべての通所介護事業所に人材のゆとりがあるわけではありません。「訪問サービスを上手く取り入れられる事業所は限られるのではないか」といった声も聞かれます。

2-2. 2割自己負担の対象拡大


介護保険制度の改定では、現役世代の負担軽減や制度の持続のために2割自己負担対象者の割合を増やすことが検討されています。

介護保険サービスの自己負担割合は、1割・2割・3割のいずれかです。自己負担割合は、利用者の前年の所得金額によって決められています。現在は、介護保険サービスを利用する方の多くが1割負担です。介護保険制度の改定により、2割負担対象者が拡大されると、1割負担だった方は介護サービスの自己負担額が2倍となり負担が大きくなります。

自己負担割合が上がることで、「介護サービスの利用頻度を減らしてしまう」「施設利用料が払えなくなる」などの意見もあり、2023年末まで結論が延期されています。

2-3. 財務諸表の公表義務化


2024年度の介護保険制度の改定で、介護サービス事業所における財務諸表が公表義務化となることが決定しました。

制度改定後は、各事業所の財務諸表は厚生労働省の介護サービス情報公表システムで公開されます。公表義務化により、事業所の経営状態を誰でも自由に確認が可能です。

数多くある介護サービス事業所の中から、利用先を選ぶ判断材料の1つとして役立てることもできます。

2-4. 介護予防支援事業所の拡大

 

介護保険制度改定では、介護予防支援サービスを行う事業所の拡大が決定しています。

現在、介護予防支援サービスを担当しているのは各地区の地域包括支援センターです。介護予防支援事業所の拡大により、居宅介護支援事業所でも介護予防支援サービスを提供できるようになります。業務負担を分散して地域包括支援センターの負担を軽減できるなどのメリットがあります。

ただし、介護予防支援事業所の拡大で現在の契約内容や利用料金がどのようになるのかなど、詳細は未定です。

2-5. 処遇改善加算の一本化

 

介護職員の処遇改善加算の一本化も、介護保険制度改定で気になる論点の1つです。

介護報酬の処遇改善加算には、下記の3種類があります。

・介護職員処遇改善加算

・介護職員等特定処遇改善加算

・介護職員等ベースアップ等支援加算


処遇改善加算が複雑で分かりにくいことから、「処遇改善の実感がない」「事務手続きが面倒だ」などの声が上がっていました。3つの処遇改善加算を一本化することで、介護現場の生産性向上が期待できます。
2024年度の改定において、ほぼ確実に盛り込まれる事項です。

2-6. 科学的介護のさらなる推進


デイサービスや特別養護老人ホームでは、すでに科学的介護が始まっています。利用者の利用内容、介護サービスを受けたことによる介護度の変化などをデータ収集するシステムを「LIFE」と言います。

将来的には、訪問介護・居宅介護支援サービスでもLIFEへの情報入力が行われる予定です。分析されたフィードバックを活用することで、質の高い介護サービスを提供しやすくなります。

ただし、データ収集のためにかかる入力負担の軽減や内容の精査など、議論は続けられています。

2-7. 福祉用具貸与のみにおけるケアプラン費のカット

 

介護保険制度改定で注目したいポイントの1つが、福祉用具貸与のみにおけるケアプラン費のカットです。

レンタルで利用できている福祉用具を購入対象品とする案があり、購入対象品にすることでケアプラン費の削減につながります。また、長期レンタルで発生する介護報酬も減らすことが可能です。

ただし、毎月の関わりがなくなることで介護者と家族が孤立しやすくなる可能性が指摘されています。福祉用具関連団体からの反発もあるため、決定の確実性は低いと言えるでしょう。

2-8. 介護業界における小規模法人の大規模化


介護保険制度改定に向けて、介護業界における小規模法人の大規模化が提言されています。

介護サービスを提供する事業所の多くは小規模法人です。政府は、小規模法人を大規模化することで、業務効率化の促進や感染症発生時のスムーズな業務継続につながるとしています。

一方、現場からは「優良介護事業者の解体は地域の損失につながる」「大規模=効率的とは限らない」といった声も上がっていることもあり、議論が続けられている段階です。

3. 2024年介護保険制度改定で見送りが決定した2つの事項


介護保険制度改定に向けて政府が提言していた事項のうち、すでに2つの事項について見送りが決定しています。2024年度の改定で見送りになった事項は、2027年度の改定で結論が出される予定です。

以下では、2024年度の介護保険制度改定で見送りが決定した2つの事項について、概要と見送りの理由を解説します。

3-1. 要介護1~2における総合事業への移行


要介護1~2における総合事業への移行は、要介護1・2の訪問介護や通所介護などの介護サービスを総合事業にして、地域や民間企業と連携する構想です。要支援1・2における総合事業は、すでに実現しています。

総合事業への移行には、人員基準緩和による介護職員の確保や介護費の抑制などのメリットがあります。しかし、サービスの質の低下や事業所の撤退などの懸念もあることや、世論の反対が大きかったこともあり、2024年度は見送りが決定しました。

3-2. ケアプランの有料化


2024年度の介護保険制度改定では、ケアプランの有料化も見送りが決定しました。

現在、在宅サービスにおけるケアプランの作成は10割保険負担のため利用者負担はありません。一方で、施設サービスではケアマネジメント費用を利用者が負担していることから、政府は公平性を保つために有料化を提言していました。

しかし、「利用者やご家族からの要求がエスカレートしかねない」「利用料管理などの業務負担が増える」などの反対意見が多く、2027年度の改定に持ち越されました。

まとめ


2024年度の介護保険制度改定に向けて、「2割自己負担の対象拡大」「介護予防支援事業所の拡大」「処遇改善加算の一本化」などについて議論が進められています。「2025年問題」による介護サービスへの影響が懸念される中で、2024年度の改定は特に重要な改定と言えます。

提案されている事項の中には、利用者やご家族に直接的に影響する内容もあるため、どのような内容が議論されているのかチェックしておくことが大切です。議論されている事項の概要や確実性にも注目しましょう。

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