2023/7/20(最終更新日)

エルニーニョ現象とは?大雨・台風などの災害に備えるための方法も

ニュースや天気予報などで「エルニーニョ現象」という言葉を見聞きしたことがある方も多いでしょう。エルニーニョ現象は、日本の気象にも大きな影響を及ぼします。

今年(2023年)も5月~6月にエルニーニョ現象が発生していることから、スーパーエルニーニョへの発達のリスクや日本への影響が気になる方もいるのではないでしょうか。

当記事では、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発達するしくみや日本への影響、2023年における天候の見通しについて解説します。ラニーニャ現象からエルニーニョ現象に急転することによる影響を過去の事例をふまえながら確認し、今後の備えに活かしましょう。

目次

1. エルニーニョ現象とは?発生のしくみ・主な影響

1-1. エルニーニョ現象とラニーニャ現象の違い

2. 【2023年5月~6月】日本でエルニーニョ現象が発生

2-1. 「スーパーエルニーニョ」に発達するおそれも

3. 日本における2023年7月~9月の天候見通し

3-1. 平年より高い気温が見込まれている原因は「ラニーニャ現象」にあり

4. ラニーニャ現象→エルニーニョ現象の急転によって考えられる影響

4-1. 大雨・豪雨による水災

4-2. 巨大台風

5. 大雨・豪雨・台風などの災害に備えるためには?

まとめ

1. エルニーニョ現象とは?発生のしくみ・主な影響



「エルニーニョ現象」とは、南米ペルー沖から太平洋の赤道海域(日付変更線付近)にかけての海面水温が平年より高い状態になり、1年程度継続する現象を指します。この現象は、クリスマス付近の12月ごろに発生するため、ペルーでは「エルニーニョ(スペイン語で「神様の男の子」)」と呼ばれるようになりました。

海面水温が高まるメカニズムはまだ解明されていませんが、エルニーニョ現象が発生すると、太平洋上に吹く東風(貿易風)が例年より弱まることが知られています。エルニーニョ現象は世界中の気象に影響を与えることを押さえておきましょう。

例えば貿易風が弱まることで、ペルー沖では栄養分豊富な深層水が海面付近に湧きあがらなくなるため、漁獲量の減少につながってしまいます。

雨を降らせる積乱雲が通常時よりも東に移ることにより、太平洋西側(オーストラリアなど)では大規模な干ばつや森林火災、農作物の不作などが発生することも珍しくありません。

また、エルニーニョ現象は日本の気象にも影響を及ぼします。エルニーニョ現象が発生した年には梅雨が長引く傾向があり、台風が減ったり冷夏になったりするケースがほとんどです。また、冬には西高東低の気圧配置が弱まり、暖冬になる傾向があります。

1-1. エルニーニョ現象とラニーニャ現象の違い


「ラニーニャ現象」とは、
南米ペルー沖から太平洋の赤道海域(日付変更線付近)にかけての海面水温が平年より低い状態になり、1年程度継続する現象を指します。「ラニーニャ」とはスペイン語で「女の子」を意味しており、名称・現象の内容ともに相対する存在と言えるでしょう。

ラニーニャ現象が発生すると、通常時よりも貿易風が強まります。その結果、太平洋西部の海面温度が上昇し、積乱雲などの雨雲が盛んに発生するようになるため、東南アジア、オーストラリアなどでの降水量が増加する傾向があります。

日本付近では夏は猛暑・冬は厳冬となりやすく、降水量が増加することから大雪が降る可能性があることに注意が必要です。

2. 【2023年5月〜6月】日本でエルニーニョ現象が発生


2023年6月9日、気象庁は2023年5月時点において、エルニーニョ現象が発生していると推定されることを発表しました。

エルニーニョ現象が夏季に発生するのは8年ぶりであり、気象庁は6月以降今秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高いと予想しています。

(出典:気象庁「エルニーニョ監視速報」/https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/elnino/kanshi_joho/kanshi_joho1.html

2-1. 「スーパーエルニーニョ」に発達するおそれも


「スーパーエルニーニョ」とは、
エルニーニョ現象が発生する海域において、海面水温が基準値よりも1.5℃~3℃以上高くなる現象です。エルニーニョ現象は海面水温が基準値よりも0.5℃以上高い状態を指すことから、スーパーエルニーニョはエルニーニョ現象がさらに発達した現象であると言えるでしょう。

スーパーエルニーニョに発達した場合、海面水温の上昇による影響を受けて台風や豪雨をもたらす雨雲が頻繁に発生するおそれがあります。台風や雨雲は海面水温が高い海域を通過しながら勢力を増していくため、日本列島に上陸した場合は大規模な水害が発生することが考えられます。

3. 日本における2023年7月~9月の天候見通し


2023年は5月にエルニーニョ現象が発生したと発表されており、今後はより大規模なスーパーエルニーニョに発達する可能性も指摘されています。それでは、日本における2023年夏(7月~9月)の天候はどのような予測となっているのでしょうか。

◆日本の天候見通し(2023年7月~9月)

 平均気温(7月~9月)降水量(7月~9月)

北日本

日本海側

ほぼ平年並み

ほぼ平年並み

太平洋側

東日本

日本海側

平年並み または 高い

平年並み または 多い

太平洋側

西日本

日本海側

高い

平年並み または 多い

太平洋側

沖縄・奄美

高い

ほぼ平年並み

(出典:気象庁「向こう3か月の天候の見通し 全国 (07月~09月)」/https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?term=P3M

また、沖縄・奄美地方以外の地域では、7月は雨の日が多く、ときには大雨が降る可能性もあると予測されています。平年に比べて晴れの日が少なくなる可能性があることに注意しましょう。

3-1. 平年より高い気温が見込まれている原因は「ラニーニャ現象」にあり


エルニーニョ現象の発生時には、「冷夏・暖冬」となりやすい
と言われています。

しかし、気象庁の見通しによると、エルニーニョ現象が続くとされる2023年夏において、多くの地域で平年並みか平年よりも気温が高い状態になるとされています。これは、2020年9月に発生し、2022年~2023年の冬まで続いた「ラニーニャ現象」の影響によるものです。

ラニーニャ現象が発生すると、日本では「猛暑・厳冬」になりやすい傾向があります。

しかし、2023年の夏は、2022年~2023年の冬まで続いたラニーニャ現象による影響がまだ残っていると推定されています。エルニーニョ現象でよく見られる「冷夏」の状態にはならない可能性が高いと考えられるでしょう。

4 ラニーニャ現象→エルニーニョ現象の急転によって考えられる影響


半年ほどという短い期間で「ラニーニャ現象」から「エルニーニョ現象」に急転した年は珍しく、例年とは異なる気象状況が発生することが懸念されています。

ラニーニャ現象からエルニーニョ現象への急転が見られた例として2018年の夏が挙げられますが、この時期は全国的に大雨・豪雨や巨大台風による被害の多い年でもありました。

2023年も2018年と同様の影響があるとは断言できませんが、起こり得る災害に対して備えるためにも、過去の事例を知り、考えられる影響や災害について知ることが大切です。ここでは、2018年夏に起こった気象による影響や大規模な災害の例を2つ紹介します。

4-1. 大雨・豪雨による水災

2018年(平成30年)7月、西日本を中心とする広い範囲で、長時間の降水量が観測史上1位を更新するほどの記録的な大雨が降りました。その結果、河川の氾濫やがけ崩れなどが、西日本を中心として広い範囲かつ同時多発的に発生し、下記のような甚大な被害が発生しています。

◆平成30年7月豪雨(西日本豪雨)による被害

  • 死者…223名
  • 行方不明者…8名
  • 家屋の全半壊など…20,663棟
  • 家屋浸水…29,766棟

(出典:国土交通省「1.平成30年7月豪雨災害の概要と被害の特徴」/https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/hazard_risk/dai01kai/dai01kai_siryou2-1.pdf

4-2. 巨大台風


2018年(平成30年)9月、非常に強い勢力で徳島県南部に上陸した台風第21号は、四国地方や近畿地方を中心に甚大な被害を出しながら近畿地方を縦断し、日本海を北上しました。

台風第21号は猛烈な雨と過去最高レベルの高潮をもたらし、大阪府や兵庫県では広い範囲で浸水害が発生しました。また、暴風や高潮の影響により、関西国際空港の滑走路の浸水、鉄道の運休や航空機・船舶の欠航、断水・停電といったライフラインの被害も発生しています。

◆平成30年第21号台風による被害

  • 死者…14名
  • 重症者…46名
  • 家屋被害…8万棟以上

(出典:内閣府「令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-3 平成30年台風第21号による災害/https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h31/honbun/0b_1s_01_03.html

(出典:消防庁「平成30年台風第21号による被害及び消防機関等の対応状況(第10報)」/https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/40fa100bdc7b7db0e896733faa88c208d8b032ee.pdf

(出典:気象庁 大阪管区気象台「平成30年(2018年)台風第21号(記録的な暴風・高潮)/https://www.jma-net.go.jp/osaka/kikou/kakojirei/kakojirei_2018_t1821.pdf

5 大雨・豪雨・台風などの災害に備えるためには?


2023年の夏は、ラニーニャ現象からエルニーニョ現象への急転により、大雨・豪雨、台風などの災害が発生するリスクが高い
と考えられます。これらの災害に備えるためにも、防災対策を早めに行うことが大切です。

◆自分でできる災害対策(大雨・豪雨・台風)

  • ハザードマップで危険な箇所や避難場所、避難経路などを事前に確認する
  • 屋外のもので風で飛ばされそうなものは屋内にしまったり、固定したりする
  • 雨戸・網戸を補強・固定する
  • 自動車のガソリンを満タンにしておく
  • 食料やラジオ、懐中電灯などの非常用品・非常用持ち出し袋を準備する
  • 水を確保する
  • スマートフォンやパソコン、モバイルバッテリーなどをフル充電しておく


また、台風や豪雨によって被害を受けた場合、火災保険などの各種保険の補償を受けられる場合もあります。万が一の際に備えて、共済や保険に加入することも検討しましょう。

まとめ

「エルニーニョ現象」は南米ペルー沖の海面水温が平年より高くなる現象であり、気象庁は2023年5月にエルニーニョ現象が発生したと発表しています。2023年の夏はラニーニャ現象からエルニーニョ現象へと急転しているため、冷夏とはならず、猛暑かつ台風・豪雨などの災害が多くなるおそれがあることに注意しましょう。

台風や豪雨に備えるためには、ハザードマップの確認や非常用品の点検、自宅まわりの危険箇所の点検などの事前準備が重要です。これらの対策に加えて、火災保険など災害による被害に対する補償が備わっている共済・保険への加入を検討している方は、ぜひ「生活クラブ共済連」にご相談ください。

カテゴリーアーカイブ

資料請求 ネット申し込み

ページトップへ