スマホは、連絡手段の他に遊びや調べ物など幅広い用途に使えて便利なアイテムです。そのため、四六時中スマホを触ってしまう子どもも少なくなく、我が子の視力低下を心配している親御さんも多いでしょう。
この記事では、スマホが視力にどういった影響を与えているのかを具体的に解説するとともに、視力以外に起こり得る悪影響について紹介します。併せて、子どもの「スマホの見過ぎによる視力低下」防止対策も紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
3.視力低下だけではない?スマホの見過ぎによるさまざまな影響
4.子どもの「スマホの見過ぎによる視力低下」を防ぐためにできること
1.子どもの視力低下は増加している?
スマホが一般的に普及している現代において、子どもの視力低下も増加傾向にあります。下記は、2012年度・2017年度・2022年度における小学生~高校生までの子どもの視力をまとめたデータです。
0.7以上1.0未満 | 0.3以上0.7未満 | 0.3未満 | |
---|---|---|---|
2022年度 | 小学生:12.54% 中学生:11.43% 高校生:9.74% | 小学生:13.69% 中学生:20.37% 高校生:18.32% | 小学生:10.64% 中学生:28.86% 高校生:42.75% |
2017年度 | 小学生:11.16% 中学生:11.53% 高校生:11.83% | 小学生:11.68% 中学生:16.42% 高校生:16.59% | 小学生:8.62% 中学生:26.68% 高校生:37.58% |
2012年度 | 小学生:10.62% 中学生:11.81% 高校生:11.44% | 小学生:11.34% 中学生:17.54% 高校生:16.13% | 小学生:7.95% 中学生:22.25% 高校生:33.36% |
(出典:文部科学省「学校保健統計調査-令和3年度(確報値)の結果の概要」/https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1411711_00006.htm)
(出典:文部科学省「学校保健統計調査-平成28年度(確定値)の結果の概要」/https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11293659/www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1380547.htm)
(出典:文部科学省「学校保健統計調査-平成23年度(確定値)結果の概要-」/https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11293659/www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1319050.htm)
「0.7以上1.0未満」と「0.3以上0.7未満」においては、年度によって増えたり減ったりと安定しない結果となっています。
一方で、最低視力の0.3未満は小学生、中学生、高校生どの年代においても割合が増加していることが明白です。
つまり、年々子どもの視力は低下傾向にあり、「0.3以上~1.0未満」の比較的健全な視力を保てる子どもが少なくなってきていると言っても過言ではありません。
特に高校生の割合増加は著しく、視力が0.3未満となっている高校生の増加は、2012年度に33.36%、2022年度に42.75%と10年間でプラス約10%です。
これほどまでに子どもの視力低下割合が増えているのは、スマホが普及した時期と使い方の変化が大きく影響したことが大きな理由でしょう。
Apple社の「iPhone」が販売されたのは2007年のことですが、日本にスマホが普及し始めたのは少し遅れた2011年頃です。
普及し始めた当初に比べ、近年のスマホは機能が格段に充実しており、連絡手段だけでなく動画やゲームといった娯楽的な使い方も多くなっています。
スマホ使用時間の増加によって、2012年と2022年で比べると子どもの視力低下割合は2022年の方が必然的に高くなったと言えるでしょう。
2.子どもの視力低下はスマホ利用が原因?
子どもの視力が低下している主な原因は、スマホの利用です。スマホが子どもの視力低下を招いたとされる具体的な理由には、下記が挙げられます。
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内閣府公表の「令和4年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査」で明らかとなった子どものインターネット利用率は、次の通りです。
小学生 | 97.5% |
---|---|
中学生 | 99.0% |
高校生 | 98.9% |
(出典:内閣府「令和4年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)」/https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r04/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf)
驚くことに、小学生から高校生まですべての年代で97%以上の子どもがインターネットを利用しています。
さらに、1日あたりのインターネット利用時間も決して短くありません。
小学生 | 中学生 | 高校生 | |
---|---|---|---|
1時間未満 | 9.3% | 3.1% | 1.4% |
1時間以上2時間未満 | 15.2% | 9.4% | 3.9% |
2時間以上3時間未満 | 19.9% | 14.4% | 11.6% |
3時間以上4時間未満 | 16.1% | 18.2% | 13.0% |
4時間以上5時間未満 | 12.4% | 14.9% | 14.8% |
5時間以上6時間未満 | 8.2% | 11.7% | 11.8% |
6時間以上7時間未満 | 7.0% | 7.5% | 10.2% |
7時間以上 | 8.9% | 17.4% | 28.2% |
分からない・無回答 | 2.9% | 3.3% | 5.2% |
(出典:内閣府「令和4年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)」/https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r04/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf)
1日のインターネット利用時間を調査したデータを見ると、1時間未満の短時間利用者割合はどの年代も1桁程度しかいません。
高校生においては、1日7時間以上インターネットを利用しているのが約30%と驚異的な数値を出しています。
1日のうち、インターネットに時間を割いている子どもが明らかに多いという結果から、視力に与える影響も非常に大きいことが分かるでしょう。
では、子どもたちはどのような情報通信機器を使ってインターネットを利用しているのか、使用機器の割合も見てみましょう。
小学生 | 中学生 | 高校生 | |
---|---|---|---|
スマホ | 42.8% | 78.1% | 96.9% |
自宅用PC・タブレット | 55.6% | 46.4% | 42.8% |
GIGA端末 | 70.2% | 70.0% | 50.4% |
ゲーム機 | 73.6% | 68.4% | 46.8% |
テレビ | 56.6% | 57.1% | 54.5% |
(出典:内閣府「令和4年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)」/https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r04/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf)
小学生は、まだスマホを持っていない子どもも多いです。そのため、インターネット利用時の機器はスマホに限らずあらゆる機器が使われています。
しかし、中学生以降はスマホを持つ子どもが増える傾向にあることから、インターネット利用時の機器がスマホに集中しているケースがほとんどです。高校生にいたっては、約97%の子どもがスマホでインターネットを利用するというデータが出ています。
これらの結果から、スマホは子どもの視力を低下させる大きな要因であると言えるでしょう。
ただし、視力低下の原因がすべてスマホの利用とは限りません。遺伝的要因、環境的要因、目の病気など、あらゆる原因が考えられるため、スマホのみを原因と考えるのは危険です。
3.視力低下だけではない?スマホの見過ぎによるさまざまな影響
スマホは視力低下に大きく影響を与えますが、実はそれだけではありません。子どもの健康を守るために、視力低下以外の悪影響についても理解しておくことが大切です。
ここからは、スマホの見過ぎによってどのような影響やリスクがあるのかを具体的に解説します。
3-1.近視
近視とは、遠くのものがはっきりと見えない状態のことです。子どもは手が短いため、スマホを手に持って操作すると必然的に画面と目の距離が近くなります。
さらに、スマホに集中することでより画面に近づこうとしてしまう子どももいるでしょう。こうした環境的要因により、子どもが近視になってしまう恐れもあります。
3-2.後天性内斜視
内斜視とは、左右いずれか一方の目が内側に向かっている状態のことです。乳児に見られる場合は先天性内斜視といい、生後6ヶ月以降に発症した場合は後天性内斜視といいます。
後天性内斜視の原因は、現段階で明確になっていません。ただし、脳の異常、ケガ、ストレス、視力の悪さといったことが原因になり得ると言われています。
スマホのヘビーユースは視力低下を招くため、その延長で後天性内斜視を発症する可能性が高いことも覚えておきましょう。
3-3.ドライアイ
ドライアイは、涙液の減少によって目の乾燥を招く病気です。目の表面に涙が十分に行きわたらなくなり、目が傷ついたり充血したり目が見えにくくなったりします。
スマホに集中すると無意識にまばたきの回数が減るため、ドライアイを発症する可能性が高いです。
3-4.睡眠障害
スマホから出る強い光には、入眠作用がある「メラトニン」というホルモンの分泌を抑制する働きがあります。メラトニンはスムーズな入眠を妨げる原因となるため、なかなか眠れなかったり睡眠の質が悪くなったりといった問題へとつながる可能性が高いです。
さらに、睡眠の質が低下することで、授業中に眠くなったり部活で力が出せなかったりといった弊害にもつながります。このように、私生活に何らかの支障をきたすため、寝る前はスマホを使わないなどの対策が必要です。
4.子どもの「スマホの見過ぎによる視力低下」を防ぐためにできること
子どもの視力低下を防ぐためには、スマホの見過ぎをやめさせることがまず重要です。
しかし、近年のスマホは動画やゲームといった娯楽要素が強い傾向にあります。なかなかやめられないという子どもも多いため、子どもとスマホを切り離すことが難しいと悩む親御さんも多いでしょう。
そこで、子どもがスマホの見過ぎにならないように次のルールを提案することをおすすめします。
- 1日の利用時間を決める
子どもがダラダラとスマホを使ってしまう場合は、1日の利用時間を決めましょう。
おすすめは、子どもと一緒に時間を決めることです。親が勝手に決めるのではなく、子どもが納得した時間をルールにすれば、時間を守りやすくなります。
- 姿勢や距離に気を付けさせる
スマホに夢中になると、自然と目と画面の距離が近くなっていきます。視力低下を加速させる恐れがあるため、できるだけ姿勢を正し画面と距離をとることをルールにしましょう。
子どもがこうしたルールを守ってくれれば良いですが、約束事よりも楽しさが勝ち、ルールをしっかり守らない子どもも多くいます。親の制止を聞かず視力が低下してしまったり、その他の症状が発生したりするというリスクに備えて、保険に加入しておくのもおすすめです。
まとめ
スマホは、子どもの視力低下に大きな影響を与えています。また、視力だけでなくドライアイや後天性内斜視など、あらゆる目の病気にもつながる可能性を秘めていることにも注意が必要です。子どもの目の健康を守るためには、親がスマホの危険性を十分に理解し子どもに伝えていくことが大切と言えるでしょう。