ニュースや情報番組などで、「大気の状態が不安定」という言葉を見聞きしたことがある方も多いでしょう。大気の状態が不安定になると、自然災害が起こるリスクも高まりやすくなることから、言葉の具体的な意味や起こり得る気象現象について気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「大気の状態が不安定」という言葉が指す具体的な大気の状態や、大気の乱れが起こる原因について解説します。大気の状態が不安定になることで起こり得る気象現象も併せて確認し、自然災害に対して可能な限りの備えをしておきましょう。
目次
1.「大気の状態が不安定」とは?
「大気の状態が不安定」とは、上空と地上付近とで温度差が生じ、激しい雨や雷をもたらす活発な積乱雲が発生しやすい状態になっていることを指します。
上空と地上付近とで温度差が生じると、密度が大きく下降しやすい冷たい空気は下へ、密度が小さく上昇しやすい暖かい空気は上空へと移動します。
暖かく湿った空気が上空へと上昇し始めると、積乱雲が発達しやすくなるため、集中的な降雨や落雷といった現象が起こりやすくなります。
2.「大気の状態が不安定」となる主な原因
大気の状態が不安定になる主な原因は、上空の空気と地上付近の空気の温度差が大きくなり、空気の対流が生じることです。上空と地上付近とで空気の温度差が生じる要因としては、次のようなものが挙げられます。
【上空の空気と地上付近の空気の温度差が大きくなる主な要因3つ】
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なお、上記のうち1つの要因だけで大気の状態が不安定になるわけではありません。これらの要因が絡み合うことにより、大気が乱れやすい状態になることを押さえておきましょう。ここでは、上記の3つの要因について詳しく解説します。
2-1.上空に寒気が流れ込む
気象分野における「寒気」とは、まわりの空気と比べて温度が低く、冷たい空気のことです。
上空に寒気が流れ込むと、まわりの空気よりも密度が大きい寒気は、上空から地上付近に向かって下降を始めます。
地上付近の比較的暖かい空気は上空へと上昇し始めるため、空気の対流が生まれます。これが大気の状態が不安定になる要因の1つです。
2-2.地上付近に暖かく湿った空気が流れ込む
日本付近では、春から夏、秋にかけて、南の海上から暖かく湿った空気が地上付近に流れ込みやすくなります。
暖かい空気はまわりの空気よりも密度が小さいため、地上付近から上空へと移動します。これにより、上空の比較的冷たい空気との対流が起こって上昇気流が発生し、積乱雲が盛んに発生するようになります。
2-3.強い日射により地表面が温められる
強い日射により暖められた地面の熱や、自動車・空調室外機の熱などの人工排熱によって地表面が暖められることも、大気の状態が不安定になる原因の1つです。
暖かくなった地表面に海上から湿った空気が流れ込むと、空気が暖められて上空へと移動を始めます。上空の比較的冷たい空気との対流が起こり、陸の上空で積乱雲が活発に発達するようになります。
3.「大気の状態が不安定」によって起こり得る気象現象
「大気の状態が不安定」という状態になると、発達した積乱雲が盛んに発生しやすくなります。集中豪雨や落雷、降雹(こうひょう)、突風・竜巻といった災害につながる気象現象の発生リスクも高まることに留意しましょう。
ここでは、大気の状態が不安定なると発生するリスクが高まる気象現象と、その発生メカニズムについて解説します。
3-1.集中豪雨
集中豪雨(ゲリラ豪雨)とは、長時間にわたって狭い範囲に集中して降る大量の雨のことを指します。
集中豪雨は、地表面に流れ込んだ暖かく大量の水蒸気を含む空気が上昇気流によって上空へと移動する際に大きな積乱雲を形成することで発生します。このようにして発生した複数の積乱雲が組織化し、「線状降水帯」を作ることも少なくありません。
集中豪雨によって局地的な大雨が降ると、河川の増水・氾濫や土砂災害、道路の冠水・建物の浸水といった洪水被害が発生する恐れがあります。
水の勢いでふたが外れて開放された道路のマンホールに転落したり、水圧でドアが開かなくなり地下室内や車内に閉じ込められたりするケースもあることを押さえておきましょう。
3-2.落雷
地上付近の暖かい空気が上昇気流によって上空へと移動することで発生する積乱雲は、集中豪雨をもたらすとともに、落雷を発生させる雲でもあります。
積乱雲の中には多数の水や氷の粒が含まれています。これらの粒が衝突することで発生した静電気は積乱雲の中に蓄積されますが、含み切れなくなると雷として放電します。
一般的な落雷による被害としては、人体や住宅などへの落雷による死亡や住宅の損傷、火災の発生などが挙げられます。また、落雷によって瞬間的な高電圧が発生した場合には、家電の故障や停電が起こる可能性があることも押さえておきましょう。
3-3.降雹
雹(ひょう)とは、上空から降ってくる直径5mm以上の氷の粒のことを指します。雹は積乱雲の中で発達しますが、ある程度の大きさまでは雲の中の上昇気流によって落下が妨げられています。
しかし、積乱雲の中で上昇・下降を繰り返しながら成長した氷の粒は、落下する力も大きくなるため、上昇気流に逆らって地上へと落下します。これが降雹です。特に、地表面が暖かく上空に寒気があるといった「大気の状態が不安定」な状態では、雹を降らせる積乱雲が発達しやすくなります。
雹は粒のサイズが大きいほど落下速度も速くなるため、車や住宅の破損、人や動物のケガなどが発生する可能性があることに注意が必要です。雹のサイズが小さくても、大量の雹が地面に積もると滑りやすくなり、ケガにつながりやすいことにも注意しましょう。
3-4.突風・竜巻
大気の状態が不安定になると、発達した積乱雲から吹き下ろされる強い下降気流によって、非常に強い風(突風)が吹くことがあります。また、発達した積乱雲に伴う強い上昇気流によって、激しい渦巻き(竜巻)が発生することも珍しくありません。場合によっては平均風速の3倍以上もの強さの風が吹くケースもあることに注意しましょう。
突風や竜巻による被害としては、平均風速の3倍以上になることもある強い風による建物の倒壊や車両の転倒などが挙げられます。また、強風で飛ばされた物や巻き上げられた物が非常に速い速度で飛んでくることもあるため、人や動物のケガ、窓ガラスや外壁の破損なども起こり得ます。
4.自然災害に備えるためにできること
「大気の状態が不安定」になることで生じる気象現象は、住宅や車両への被害だけでなく、人命を脅かす被害が発生する恐れもあることに注意が必要です。
気象情報は日常的にチェックし、「大気の状態が不安定」という言葉を見聞きしたときには、被害を未然に防ぐための対策を講じるようにしましょう。
気象現象 | 対策 |
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集中豪雨 |
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落雷 |
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降雹 |
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突風・竜巻 |
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また、これらの自然災害によって被害・損害が生じた場合の金銭的な負担を軽減するために、事前に保険に加入しておくこともおすすめです。
自然災害による被害に対応する保険には、火災保険(住宅)や自動車保険(車)、傷害保険(対象者のケガ)などがあるため、保険の種類や補償内容を確認した上で加入しましょう。
まとめ
「大気の状態が不安定」とは、上空に寒気が流れ込んだり、地上付近に暖かい空気があることにより、空気の対流が発生するような状態を指します。大気の状態が不安定になると、発達した積乱雲が盛んに発生するようになります。集中豪雨や落雷、降雹、突風といった自然災害が起こりやすくなることに注意しましょう。
「大気の状態が不安定」になることで生じる自然災害に備えるためには、気象情報をこまめにチェックした上で対策を講じることが大切です。火災保険や自動車保険、傷害保険など、自然災害での被害に対応した保険・共済に加入する際には、補償の内容や範囲を十分に確認し納得した上で契約しましょう。