2024/3/4(最終更新日)

前立腺がんとは?原因から症状・検査方法・治療方法まで

がんにはさまざまな種類があり、中には男性特有のがん、女性特有のがんがあります。男性特有のがんとして知られているものが「前立腺がん」です。

前立腺がんは、男性であれば誰でも罹患するリスクがあり、注意しておくべきがんと言えます。しかし、前立腺とはそもそも何か、前立腺がんの原因や具体的な症状は何かを知らない方も多いでしょう。

今回は、前立腺がんの概要と原因・症状を解説し、前立腺がんの検査方法や治療方法も紹介します。

目次

1.前立腺がんとは?

2.前立腺がんの原因

3.前立腺がんの症状

4.前立腺がんの検査方法

4-1.スクリーニング検査

4-2.確定診断

4-3.病期診断

5.前立腺がんの治療方法

まとめ

1.前立腺がんとは?

   

前立腺がんとは、男性のみにある臓器の「前立腺」にできるがんです。前立腺の細胞が正常に増殖する機能を失い、異常な細胞が無秩序に自己増殖することによって発生します。

そもそも前立腺は男性の膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいる臓器です。前立腺は尿道に近い内腺と、外側に位置する外腺に分けられ、前立腺がんの多くは外腺のほうに発生します。

前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺に発生するため、罹患者も男性のみとなっています。2019年における前立腺がんの罹患数などを表にまとめると、下記の通りです。

【前立腺がんの罹患数・死亡数・5年相対生存率】

罹患数(2019年)

94,748例

死亡数(2020年)

12,759人

5年相対生存率

99.1%


(出典:がん情報サービス「前立腺:[国立がん研究センター がん統計]」/https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/20_prostate.html

罹患数の94,748例は、男性の部位別がん罹患数でもっとも多い数値となっています。一方で死亡数の12,759人は、部位別がん死亡数の中では死亡数が少ないほうです。

5年相対生存率は、がんと診断された方で5年後に生存している方の割合が、日本人全体で5年後に生存している方の割合に比べてどの程度かを示しています。5年相対生存率の99.1%は高い数値であり、前立腺がんは治療によって生命を救える可能性が高いがんです。

男性が注意すべき前立腺の病気には「前立腺肥大症」もあります。前立腺がんは多くが前立腺の外腺にできるのに対し、前立腺肥大症は内腺のほうにできる点が違いです。

また、前立腺がんは骨や他臓器への転移があり、一方で前立腺肥大症には転移がありません。

2.前立腺がんの原因



前立腺がんの原因は、「遺伝」「加齢」「欧米型の食生活」「ホルモン」などが挙げられます。

しかし、前立腺がんの決定的な原因は明らかになっていません。「遺伝」「加齢」「欧米型の食生活」「ホルモン」などの要素は、前立腺がんの発生に関与しているという程度の因果関係しか分かっていない状況です。

ただし、前立腺がんは遺伝リスクが高いと言われているため注意が必要です。特に、若年で前立腺がんに罹患した方が血縁者にいる場合は、前立腺がんの発生率はさらに高まるとされています。

また「加齢」についてはラテントがん(死後の解剖で発見される、死因と関係しないがん)として、80歳以上の方の約半数で前立腺がんが見つかると言われています。

3.前立腺がんの症状



前立腺がんの主な症状としては、下記のものが挙げられます。

  • 尿の出にくさを感じる
  • 尿を出す回数が多くなる
  • 残尿感がある
  • 自分の意思と関係なく尿が漏れる
  • 尿を出すときに痛みを感じる
  • 尿や精液に血液が混じるなど


前立腺は尿道を取り囲んでいるため、前立腺がんの症状は尿関連の内容が多くなっています。

前立腺がんは多くの場合で自覚症状がなく、がんの進行は比較的ゆっくりと進む点が特徴です。紹介した症状も、罹患の初期段階ではほとんど現れることがなく、症状が見られるようになった場合にはがんが進行しているおそれが高いと言えるでしょう。

また、がんが進行して臀部や骨盤・椎骨といった他部位にまで転移すると、骨痛や腰痛が症状として現れるようになります。

前立腺がんの代表的な症状である「尿の出にくさ」「尿を出す回数の多さ」「残尿感」などは、前立腺肥大症でも見られる症状です。自分の症状が前立腺がんか前立腺肥大症かを見分けるには、しっかりと検査することが大切です。

4.前立腺がんの検査方法

前立腺がんの検査は、医療機関である病院・クリニックや、自治体のがん検診・人間ドックなどで受けられます。

前立腺がん検査の一般的な流れは下記の通りです。

(1)

「スクリーニング検査」を受ける

(2)

スクリーニング検査でがんが疑われる場合、「確定診断」を受ける

(3)

確定診断でがんが確定した場合、「病期診断」を受ける


前立腺がん検査で行われる3つの検査について、それぞれの具体的な検査内容を解説します。

4-1.スクリーニング検査

スクリーニング検査は、前立腺がんに罹患している可能性がある人を見つけるための検査です。

一次スクリーニングの「PSA検査」と、二次スクリーニングの「直腸内触診」「画像検査」があります。

●PSA検査

PSA検査は血液検査の一種で、採取した血液中のPSA(前立腺特異抗原)の値を調べます。PSAは前立腺が産生する特異的なタンパク質であり、PSA値が高いと前立腺がんの疑いがあります。


●直腸内触診

直腸内触診は、検査者が肛門に指を入れ、直腸の壁越しに前立腺の触診をする検査です。前立腺の大きさ・硬さや表面のなめらかさ、触れたときに痛みがあるかなどを調べます。


●画像検査

超音波検査・MRI検査などで前立腺を撮影し、前立腺に影がないか、大きさや形に問題がないかを調べます。


4-2.確定診断

確定診断は、スクリーニング検査で前立腺がんが疑われる場合に受ける診断です。具体的には前立腺生検検査(針生検)を行い、前立腺の組織を詳しく調べます。

●前立腺生検検査(針生検)

前立腺生検検査は、直腸に超音波プローブを挿入して前立腺を画像で確認しながら、穿刺針で前立腺の組織を採取する検査です。採取した組織を顕微鏡で観察して、がん細胞の有無や悪性度を調べることで前立腺がんの確定診断を行います。


4-3.病期診断

病期診断は、確定診断で前立腺がんが確定した場合に、がんの進行度を調べる目的で実施される検査です。前立腺がんの広がりや、他部位への転移の有無を確認する必要があり、画像検査・骨シンチグラフィーなどの検査を組み合わせて行います。

●画像検査

CT検査やMRI検査により、前立腺と周辺のリンパ節・臓器などが画像化します。がんが前立腺内のみか、周囲への浸潤が認められるか、また他臓器やリンパ節に転移しているかなどを確認可能です。


●骨シンチグラフィー

放射性物質を体内に注射し、骨にがんの転移があるかどうかを調べる検査です。放射性物質はがんの転移がある骨に集まる性質があり、注射後に画像検査を行うことで骨へのがんの転移を調べられます。


なお、使用する放射性物質はごく微量であり、注射から数日以内に尿や便から排せつされます。


5.前立腺がんの治療方法



前立腺がんの治療方法は、がんの進行の程度、いわゆる病期(ステージ)ごとに異なります。

前立腺がんの病期分類には、いくつか種類があります。ここからは、病期を4段階に分ける「ABCD分類」で治療方法を紹介します。

  • 病期A

病期Aは、症状がほとんど見られない状態です。主に下記の治療方法を選択、もしくは組み合わせた治療が行われます。

監視療法

がんの経過観察と検査を行う

手術療法

前立腺を摘出する

ホルモン療法

薬剤により男性ホルモンの分泌・働きを抑える

放射線療法

放射線の照射でがん細胞を破壊する

 

  • 病期B

病期Bは、がんが前立腺内にのみ存在している状態です。

ステージAで紹介した「手術療法」「ホルモン療法」「放射線療法」のいずれか、もしくは組み合わせた治療が選択されます。

  • 病期C

病期Cは、がんが前立腺を超えて外部に浸潤しているものの、転移はしていない状態です。

手術療法では治療効果が乏しくなり、主に「ホルモン療法」「放射線療法」のいずれか、もしくは2つを組み合わせた治療が行われます。

  • 病期D

病期Dは、がんが前立腺だけではなく、他臓器・リンパ節・骨などにも転移した状態です。

「ホルモン療法」を中心として、「放射線療法」や抗がん剤を使用する「化学療法」も組み合わせた治療が行われます。

まとめ

前立腺がんは前立腺にがん細胞ができる病気であり、男性特有のがんです。前立腺がんの決定的な原因は明らかになっていないものの、遺伝は罹患リスクにつながると言われています。

前立腺がんの早期発見・治療をするには、検査を受けることが重要です。

また、検査によって前立腺がんと診断された場合に備えて、治療費をカバーできる保険への加入も検討しましょう。

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