2024/3/28(最終更新日)

被災者生活再建支援法とは?適用対象・支援金支給額・主な流れを解説

自然災害は突発的に発生するものが多く、特に地震・台風・豪雨による水害などが発生すると生活基盤が破壊されることもあります。

自然災害に被災して、生活の再建が必要となったときに利用できる制度が「被災者生活再建支援法」です。被災者生活再建支援法の適用対象になると、生活の再建に利用できる支援金を受け取れます。

今回は被災者生活再建支援法とは何かから、支援の適用対象と支援金支給額の詳細、支援金支給の流れまでを徹底解説します。

目次

1. 被災者生活再建支援法とは?

1-1. 被災者生活再建支援制度が制定された背景

2. 被災者生活再建支援法の適用対象|施行令第1条第1号~第4号

2-1. 【第1号】災害救助法施行令における特定の自然災害が発生した市町村

2-2. 【第2号】10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村

2-3. 【第3号】100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県

2-4. 【第4号】5世帯以上の住宅全壊被害の発生かつ第1号~第3号の区域に隣接する市町村

3. 被災者生活再建支援法における2種類の支援金|それぞれの支給額も

3-1. 基礎支援金

3-2. 加算支援金

4. 被災者生活再建支援法の支援金が支給されるまでの流れと必要な手続き

まとめ

1.被災者生活再建支援法とは?

被災者生活再建支援法とは、自然災害で住宅が全壊した世帯や、住宅の補修が必要となった世帯などに支給する、被災者生活再建支援金(支援金)について定めた法律です。

支援金の適正な活用により、被災者の生活基盤の再建・安定と被災地の速やかな復興を目的としています。

被災者生活再建支援法の対象となる自然災害とは、下記のような災害のことです。

  • 地震
  • 津波
  • 豪雨・洪水
  • 暴風
  • 豪雪
  • 高潮
  • 噴火など


ただし、自然災害によって被災したすべての世帯が、被災者生活再建支援法の適用対象となるわけではありません。

被災者生活再建支援法の適用対象となるかどうかは基本的に市町村単位で決定し、適用とならなかった場合は地方公共団体が支援対応を検討します。

1-1.被災者生活再建支援制度が制定された背景

被災者生活再建支援制度は、1995年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」をきっかけに制定された支援制度です。

阪神・淡路大震災では、直下型の地震による家屋の倒壊や火災による焼失が発生し、被災後の生活再建を進められない方が多数出ました。義援金などによる支援にも限界があり、被災者の生活再建を支援する公的制度を求める機運が高まった経緯があります。

阪神・淡路大震災と同年の9月に、内閣総理大臣設置の「防災問題懇談会」で被災地支援を目的とした基金の検討が提言されました。国会においても超党派によって被災者支援の法律について議論が交わされ、1997年7月には全国知事会で災害相互支援基金の創設が決議されています。

以上の流れを踏まえ、1998年5月に「被災者生活再建支援法」が成立しました。以降、同法は数度にわたって法改正し、制度の拡充や手続きの見直しなどが行われています。

2.被災者生活再建支援法の適用対象|施行令第1条第1号~第4号

被災者生活再建支援法の適用対象は、被災した世帯の数や被害状況によって異なります。

具体的な適用対象は、被災者生活再建支援法施行令の第1条第1号~第4号で区分されているため、利用する場合は内容を把握しておくことが大切です。

以下では、被災者生活再建支援法の適用対象である施行令第1条第1号~第4号の内容を解説します。

(出典:防災情報のページ – 内閣府「被災者生活再建支援制度について」/https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/saikenshien/pdf/siryo2_4.pdf

2-1.【第1号】災害救助法施行令における特定の自然災害が発生した市町村

施行令第1条第1号の適用対象は、災害救助法施行令の第1条第1項第1号もしくは第2号に相当する自然災害が発生した市町村です。

例として、第1号相当のケースを説明します。

  • 第1号相当のケース

第1号相当では、下記表の「市町村の人口」に対し、「住家が滅失した世帯数」が定められた数以上の場合が適用対象です。

市町村の人口

住家が滅失した世帯数

5,000人未満

30世帯

5,000人以上1万5,000人未満

40世帯

1万5,000人以上 3万人未満

50世帯

3万人以上 5万人未満

60世帯

5万人以上10万人未満

80世帯

10万人以上 30万人未満

100世帯

30万人以上

150世帯


また、第2号相当のケースでは市町村を包括する都道府県の被害も条件に含まれるものの、市町村の被害の条件は第1号相当のケースの半分に設定されています。

2-2.【第2号】10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村

施行令第1条第2号の適用対象は、自然災害によって10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村です。

住宅被害の認定を受ける際は、内閣府が定める「災害の被害認定基準」などにもとづく被害認定調査が行われます。

被害認定調査には「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「準半壊に至らない(一部損壊)」の6段階があり、第2号の対象は全壊の世帯数のみです。

2-3.【第3号】100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県

施行令第1条第3号の適用対象は、自然災害によって100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県です。

市町村単位では第1号・第2号の適用対象とならないケースでも、都道府県単位で住宅全壊被害が多数発生している場合は、第3号の適用を受けられる可能性があります。

2-4.【第4号】5世帯以上の住宅全壊被害の発生かつ第1号~第3号の区域に隣接する市町村

施行令第1条第4号の適用対象は、5世帯以上の住宅全壊被害が発生していて、かつ第1号~第3号の区域に隣接する市町村です。

ただし、第4号の適用を受けられるのは、市町村の人口が10万人未満の場合のみとなっています。

また、市町村の合併を行っていた場合は、合併した後と以降の5年間は合併前人口で適用される特例措置を受けられるケースがあります。

3.被災者生活再建支援法における2種類の支援金|それぞれの支給額も


被災者生活再建支援法で支給される被災者生活再建支援金には、「基礎支援金」と「加算支援金」の2種類があります。

受け取れる支援金の額は、世帯人数や住宅再建方法の規模によって大きく異なるため、事前に把握しておきましょう。

以下では、基礎支援金・加算支援金のそれぞれについて主な支給額や支給のルールを解説します。

(出典:防災情報のページ – 内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」/https://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/140612gaiyou.pdf

3-1.基礎支援金

基礎支援金は、罹災証明書に記載されている被害の程度を基準として支給されます。罹災証明書とは、住宅の被害認定調査によって発行される書類です。

支給対象は、被害の程度が全壊・解体・長期避難・大規模半壊の世帯です。中規模半壊や半壊・準半壊・準半壊に至らない(一部損壊)と記載されている場合は、基礎支援金は支給されません。

基礎支援金の支給額は「全壊・解体・長期避難」と「大規模半壊」によって異なり、下記の通りとなっています。

住宅の被害の程度

基礎支援金の支給額

  • 全壊
  • 解体
  • 長期避難

100万円

  • 大規模半壊

50万円


なお、世帯人数が1人の単身世帯では、基礎支援金の支給額は3/4となります。単身世帯の場合、全壊・解体・長期避難は支給額が75万円、大規模半壊は37.5万円となる計算です。

3-2.加算支援金

加算支援金は、住宅再建のために選んだ方法に応じて支給される支援金です。適用対象となる被災者が、新たに住宅を手に入れるための資金として主に活用されます。

加算支援金は、全壊・解体・長期避難・大規模半壊の世帯に加えて、中規模半壊の世帯も支給対象となります。それぞれの世帯における加算支援金の支給額は下記の通りです。

住宅の被害の程度

住宅の再建方法

加算支援金の支給額

  • 全壊
  • 解体
  • 長期避難
  • 大規模半壊

建設・購入

200万円

補修

100万円

賃貸(公営住宅を除く)

50万円

  • 中規模半壊

建設・購入

100万円

補修

50万円

賃貸(公営住宅を除く)

25万円


なお、単身世帯の場合は加算支援金の支給額も3/4となります。

4.被災者生活再建支援法の支援金が支給されるまでの流れと必要な手続き

被災者生活再建支援法の支援金を受け取るには、被災者自身が行う申請を含めていくつかの手続きが発生します。

STEP(1)

都道府県が国・支援法人・市町村に被災者生活再建支援制度の適用を報告する

STEP(2)

市町村が罹災証明書を交付する

STEP(3)

被災世帯が市町村に被災者生活再建支援法による支援金を申請する

STEP(4)

市町村が支援金申請を受けた後、都道府県が取りまとめて支援法人に申請書を送付する

STEP(5)

支援法人が国に補助金を申請する

STEP(6)

国から支援法人に補助金が交付された後、支援法人から被災世帯に支援金として支給される


6つのステップ中で被災者自身が行わなければならない手続きは、ステップ3の申請手続きのみです。

申請手続きでは下記の書類を揃えて提出します。

基礎支援金の申請書類

  • 罹災証明書
  • 長期避難世帯証明書(長期避難の場合)
  • 住民票の写し
  • 預金通帳の写し
  • その他関係書類など

加算支援金の申請書類

  • 契約書(住宅購入・賃貸など)の写しなど


また、基礎支援金は災害発生日から13か月以内、加算支援金は37か月以内に申請を行う必要があることも覚えておきましょう。

まとめ

被災者生活再建支援法は、自然災害で住宅に被害を受けた世帯へと支援金を支給する「被災者生活再建支援制度」を定めた法律です。

被災者生活再建支援法の適用対象は第1号~第4号の4つに区分されていて、制度を利用するには自分が居住する市町村などが適用対象となっている必要があります。市町村が適用対象であり、さらに住宅の被害が一定以上であると認められた場合に、支援金が支給される仕組みです。

支援金の支給額は条件によって異なるものの、基礎支援金・加算支援金の合計で最大300万円が受け取れます。支給の条件や手続きを把握し、万が一に備えておくとよいでしょう。CO・OP共済火災共済+自然災害共済はこちらから

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